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第9回 - 無痛息災 腕の痛みや手の痺れ

第9回 - 無痛息災 腕の痛みや手の痺れ

腕がジンジン、チクチクと痛い、指がビリビリ痺れる、感覚が鈍いといった症状の方は、もしかしたら頚椎が原因なのかも知れません。前回は変形性頚椎症で頚部、肩、肩甲骨周囲の痛みについてお話ししましたが、今回は頚椎症性神経根症について。

頚髄から別れた神経は、椎間孔(ついかんこう)という穴を通って首や手に分布します。頚椎の加齢的変化(変形)、骨棘(骨のとげ)、椎間関節の肥厚のため、椎間孔が狭くなり神経が圧迫されます。圧迫された神経や周囲の組織が何らかのきっかけで脹れてきたり(浮腫)炎症を起こすと、その神経が支配している場所が痛くなります。たとえば、頚椎から出る6番目の神経が障害されると、親指と人差し指や腕の外側が痛くなり痺れもでてきます。指や腕が痛くても、そこが悪いのではなく、頭で痛いと感じている状態です。炎症を起こした神経はとても敏感になっているため、首を少し動かすだけで痛みが強くなります。特に首の後ろや悪い側に傾けると痛みが増強します。

同じ症状で比較的若い方の時は頚椎椎間板ヘルニアをまず疑います。ヘルニアとは飛びだしたという意味で、文字どおり椎間板が飛び出して神経を圧迫しています。首をそらす動作、たとえば嗽や水を飲む時でも痛く、酷くなると仰向けに寝ることができなくなります。これも神経が浮腫と炎症を起こしているため。頚椎症性神経根症も頚椎椎間板ヘルニアも手術療法がありますが、まずは保存的に治療します。頚部の安静、鎮痛薬やビタミン剤の内服以外に、ペインクリニックでは神経ブロック療法を行います。血流改善の目的で星状神経節ブロック、痛みに対して腕神経叢(しんけいそう)ブロックなど状態に応じたブロックを使い分けます。一回のブロックですぐ良くなることはありませんが、繰り返し行うことで早く痛みが改善すると考えます。他に手や指に痺れが出る疾患として、手根管(しゅこんかん)症候群、肘部管(ちゅうぶかん)症候群、胸郭出口症候群などがあり、鑑別が必要です。

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