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第8回 - 無痛息災 頚部や肩の痛み

第8回 - 無痛息災 頚部や肩の痛み

首が急に痛くなって、前後左右に頭を動かせないといった経験はありませんか?多くは起床時に起きる急性の痛みで「急性項部硬直」という病名ですが、一般には「寝違え」と呼ばれているものです。起床時に限らず、急に振り向いた時にも起こり、比較的若い人に多くレントゲン写真では特に異常を認めません。これは頚椎の椎間関節(ついかんかんせつ)からの痛みです。頚椎は7個の椎体骨が背中側で左右の関節で繋がっています。この関節に関節包(関節周囲の膜)や周囲の脂肪組織が陥入する説が有カで、椎間関節ブロックで劇的に軽快します。安静と鎮痛薬の内服でも数日でよくなり、あまり心配はいりません。

何週間も痛みが続き特に高齢の方の場合は、「変形性頚椎症」かも知れません。うつ向く姿勢の多い仕事や長年頭部(結構重いものです)を支え続けた結果、椎間板が退行変性して薄くなり、椎体骨や椎間関節に負荷が増大し、骨の変形、骨棘(骨の辺縁が棘のようにとがる)形成、椎間関節も変形肥厚していきます。椎間板の表面や周りの知覚神経、骨をつなぐ靭帯が刺激され、また、椎体関節の慢性的な炎症のため、頑固な痛みやコリとなります。首の痛みだけではなく、原因となる関節や椎間板の位置で痛みは、後頭部、首の後ろや横、肩や肩甲骨周囲に響いて感じます。痛みのため筋肉も収縮して硬くなり、さらに痛みが酷くなっていきます。鎮痛薬や安静だけではなかなか良くならないときは、卜リガーポイント注射、椎間関節ブロック、星状神経節ブロックなど症状に合わせた神経ブロックをしていきます。頚部痛以外に微熱もある時などは関節リウマチやリウマチ性多発筋痛などの自己免疫疾患の可能性がありますし、体の動きとは関係なく肩が痛い時は、狭心症や胆石の場合もあり注意が必要です。腕の痛みや痩れ、手指の痩れが伴う時は、頚椎性神経根症といって、首からの神経が圧迫された状態です。同じ症状を呈す病気として頚椎椎間板へルニアがあり、次回一緒にお話します。

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