第6回 - 無痛息災 腰部脊柱管(せきちゅうかん)狭窄症
数分歩くと足が痺れて動けなくなる。少し休むと楽になるが歩くと又痺れがでてくる。これは間歇跛行(かんけつはこう)といって腰部脊柱管狭窄症の特徴的な症状です。杖をついたり、シルバーカーを押すような前かがみの姿勢では長く歩けるのに、腰を伸ばした姿勢で歩くとふとももやふくらはぎが痛くなったり痺れてくる。男性では立ちションの姿勢、女性では台所仕事が辛いとよく聞きます。なぜこういうことが起こるのでしょうか。
腰椎の後ろには脊柱管といって脊髄や神経の通り道があります。高齢になると椎間板の高さが低くなるため後ろの黄色靭帯(おうしょくじんたい)がたるんで前に張り出してきます(黄色靭帯とは脊椎の後ろにある骨を上下につなぐ靭帯で黄色に見えるためそう名付けられました)。それに加え黄色靭帯も加齢変化で分厚く硬くなりますし、周りの骨も変形して更に脊柱管は狭くなっていきます。このような変化は年齢を重ねる間に少しずつ進行し、ある限界を超えたときに症状が出てくるのです。
腰を屈めると黄色靭帯が伸びて脊柱管は広くなり、そらすと前に張り出して神経を圧迫します。圧迫による神経障害と圧迫で神経への血流低下が起るためです。MRIを撮ると一番下と下から二番目の狭窄が多く、症状に比べ驚くほど狭くなっている人もいます。腰痛がない場合もありますが、足のしびれや痛みは必ず出現します。
治療としてペインクリニックでは硬膜外ブロックを主体に行います。以前説明したようにブロックは神経の血流を良くして神経の浮腫や炎症を静めることが目的です。又、PGE1製剤(血流改善)、ビタミンB12や鎮痛薬(いろいろな種類があります)などの内服も行います。ご自分では、腰を無理にそらさないことや歩く時は早めに休みをとることも大切です。
長年罹ってきた状態ですので、急な改善は少なく治療には根気が要ります。悪化する場合や、尿失禁、便失禁などの膀胱直腸障害がある場合は手術が必要となってきます。