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第5回 - 無痛息災 帯状疱疹(たいじょうほうしん)

第5回 - 無痛息災 帯状疱疹(たいじょうほうしん)

帯状疱疹は200〜300人に一人の割合で発症しますので、案外身近な病気といえます。統計的には夏場に多いのですが、急な季節の変わり目にも多く発症しています。

症状としては皮膚に水疱が帯状に集まってでき(これが病気の名前の由来)、数日すると水疱は膿をもったようになって、1週間程度でかさぶたになり、3週間程度で皮膚は治癒します。体のどの場所にできてもおかしくありません。この水疱形成の前後でいろいろな程度の痛みが生じます。ほとんど痛みのない場合から激痛まであり、軽く触れるだけでズキズキした痛みが多く、ひどい人は焼け火箸をあてられたようだとか、擦り傷に塩をすりこまれたようだという表現をします。皮膚が治っても、多くの方がこの痛みに悩まされます。

原因は水痘・帯状疱疹ウイルスが神経で増殖したためで、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが神経の根元(脊髄後根神経節)で潜伏し、体の免疫力が弱まった時に、侵された神経に沿って皮疹と痛みをもたらすのです。免疫力低下の原因は加齢が多く(70代がピーク)極端な疲労、悪性腫瘍や大きな病気を患った時に起こり易くなります。

治療はまず抗ウイルス薬の投与で、できるだけ早期が望ましく内服や点滴で一週間行い、患部の清潔と抗ウイルス薬軟膏を塗布します。鎮痛がなかなか難しい場合が多く、軽症では一般的な鎮痛薬を使用し、効果の少ない時は弱い麻薬やプレガバリン、抗うつ薬などを併用します。神経ブロック療法が一番効果的ですが、高齢の方が多く、発症部位的に神経ブロックがしにくい場合もあり、患者によって治療は変わってきます。

なお、帯状疱疹は他人にうつりませんが、水ぼうそうとして小さなお子さんにうつる場合があります。帯状疱疹になって数ヶ月たっても痛みが変わらない場合は「帯状疱疹後神経痛」といって治療に難渋する病気になってしまいます。皮膚に触れるとビリビリした痛みと発赤や小さな水疱ができたらすぐに医療機関に受診することをお勧めします。

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